「運転士篇」

牽引役の引退。

国鉄時代から勤続48年。
はじめは整備士だった。
東室蘭で駅員もした。
人手不足を受けて
運転士になったのは40歳のこと。
必死で経験を積んだ。
「あ、今日は重いな」
「あ、からっぽのコンテナが多いな」
滑り出しやブレーキの感覚で
わかるようになった。

気づけば、
後輩も立派なベテランになっていた。
気づけば、
数年で辞めていく若者もいた。

「機関車の乗務はひとりだけ。
暴風雪の日は視界も消え、
孤独も感じる。
それでも子どもたちが
道端で手を振ってくれたり、
北海道の四季も体感できる。
ここは特等席だ。

もう何日かで、
最後の乗務日がくる。
今日も弁当がうまい。
不規則な昼夜も健康管理してくれてきた
妻の「勤続」に感謝したい。
ごちそうさまでした。
今日も大好きな玉子焼きがうまい。

掲載日 2018年2月14日
掲載紙面:北海道新聞 15段

Creative Director / Copy Writer:池端 宏介
Designer:川尻 固広
Photographer:minaco.

【企画制作・池端の一口メモ】
定年退職を迎えるベテラン運転士がテーマ。奥さんへの感謝をつづる文章でバレンタインデーに掲載した。多くの運転士さんを励ます広告になったとお礼を言われました。