2024.12.02 JOURNAL|INTERVIEW & COLUMN

新旧の考えを織り混ぜ、在りたい姿を捉え直す。| 一般財団法人札幌市スポーツ協会理事長 鈴木和弥さん

IMPROVIDEが取り組むデザインプロジェクトの「はじまり」を紹介する「STARTING LINE〜プロジェクトの起点〜」。クリエイティブディレクター小林がナビゲーターとして、企業や団体のトップや有識者と対談。ブランディング、人材開発、採用・育成をキーワードによりよい方向へ導く起点を考えていきます。

札幌市民であれば一度は利用したことがあるだろう、各区の体育館やプールなど札幌市内32の公共施設の管理運営、約1800種類のスポーツ・フィットネス教室の他にも、札幌マラソン、市民スポーツ大会をはじめとする各種スポーツイベントを開催する一般財団法人札幌市スポーツ協会。その歴史は遡ること90年、札幌市体育連盟として発足、令和2年4月に「さっぽろ健康スポーツ財団」と「札幌市体育協会」の合併統合を経て「札幌市スポーツ協会」として新たにスタートした。まさに札幌市民の「スポーツライフ」と「元気で健やかな健康」を担ってきた存在だ。

一般財団法人札幌市スポーツ協会はIMPROVIDEと自主事業である「教室事業」のブランディングに取り組む。札幌市民に健康とスポーツのある暮らしの提案を目的として、立ち上げた「教室事業」。当時は他の政令指定都市での先進事例がなく、どう運営していけば良いのかも手探り状態。しかし、試行錯誤を重ねながら、教室の種類や数を拡大していった。その結果、全国トップクラスのスポーツ・フィットネス教室数を企画・運営しているという素晴らしさを札幌市民のほとんどは、知らないのではないか。

2019年の北海道胆振東部地震、2020年からのコロナ禍によるインパクトがターニングポイントとなる。2018年度を境にお客様数が落ち込み、現在完全に戻った状況とは言えない。事業改革は進めてきたが、更なる施策として「ブランディング」が候補となった。

“事業計画当初は、ブランドづくりを法人内部のみで行う計画でした。ネーミングやロゴ、キャラクターなどをつくる案が出ていましたが、そこにはやはりプロフェッショナルなチームが必要だと考え、委託することになりました。そもそも知ってもらうだけではなく、外見といっしょに中身も新しくなる必要があり、それを一緒に取り組むコンサルティングが必要と考えたからです。色んなセクション、色んな業務があるなか、納得感をつくり、職員一人ひとりが実行できる。そんなブランディングを期待していました。”

自然災害やコロナウイルス含めて、エネルギーの高騰や円安、人口減少や物価高、人件費増などVUCA時代の経営を取り巻く状況は刻一刻と変化し続ける。ただロゴを新しくしたり、キャラクターをつくるだけの表面的なブランディングは担える範囲が少なくなってきている。札幌市スポーツ協会は、すでに長年培われた目に見えない価値があるはずだし、それと今をつなぎ続ける取り組みが必要と考えていった。現在働くみなさんの1日1日の仕事を変えることができれば、お客さまにもっと喜んでもらうことができる。それを目に見えるようにしていくのが、このプロジェクトの芯だと捉えている。

役職者向けのブランドづくりレクチャーを開催。

“当協会は長く勤めるスタッフも多く、その経験や事業の経緯は勿論、新しいスタッフたちの新鮮な目線やアイディアも活かしていきたい。新旧の考え方を混ぜ合わせることが大切です。そのためにも、ビジョンやミッションをあらためて捉え直し、みんなで進んでいく。その共通認識がスタートラインだと考えています。”

共通認識の起点とは何だろうか。「強み」や「らしさ」なのか。それとも競合企業との法人格の性質の違い?経営状態の悪化可能性の共有?何を目指し、どう向かっていくのか?我々のような外部メンバーが担当部署やトップと考えたものをトップダウンで落とし込むのではなく、ボトムアップのお手伝いをするイメージで共通認識をつくることが大切だ。

ほぼ全ての職員を対象に、複数回に分けてワークショップを開催。

歴史を紡ぎ、新しいをつくる。札幌市民の健康と生活にとって重要な事業となる、札幌市スポーツ協会とのプロジェクトは、まだはじまったばかり。

“おそらく継続した取り組みにすることが一番難しいと思っています。このブランディングの事業を通じて、それぞれのセクションができること、効果的なことを発見できるよう、それを試して改善する環境づくりをしていく。そのための動機付けをするためにも、私自身が先頭に立って一緒に取り組む必要性を感じています。”

ブランディングプロジェクトを様々なステークホルダーに伝えていく広報誌、
職員にフォーカスを当てながら、札幌市民の心と健康に役立つ情報を伝える
ポッドキャスト番組「さっぽろスポーツウェルネスラジオ」もスタート。

 

TEXT:代表 / クリエイティブディレクター 小林 元